2012年5月20日日曜日

"Los fugitivos"  〜逃亡者たち〜

私たちのスペイン語の仲間では、年二回のペースで学校がオフの時にスペイン語の原書を読んでみんなで意見を交換している。

今使っているのは:Antología   "Los mejores relatos latinoamericanos" というラテンアメリカの傑作短編集。

この会は、最初3年がかりで、マリオ・ベネデッティの"La tregua"を翻訳したところからスタートしたのだが、私たちの実力で難解なスペイン語の小説を正確に訳すのはあまりの骨折りで、それが終わった段階からは「もっと楽しんで短編を気楽に読みながら〜」という方針に変わった。

それでも、これはとても楽しい作業で、準備は大変だが、原書を読みながらパトリシア先生を囲んでみんなで意見交換をできるのはとても素敵だ。もちろんその意見交換はスペイン語で行われるので、うまく表現できず、思ったことの半分も伝えられないので少々消化不良ぎみでもあるのだが・・・楽しくてそんなことはどうでも良くなるから不思議だ。

今回の作品 "Los fugitivos" は、アレホ・カルペンティエル(Alejo Carpentier)というスイス、ローザンヌ生まれのキューバのジャーナリストである小説家の短編である。

後になって知ったが、日本では1978年に蔵原惟人によって『犬と逃亡奴隷』というタイトルで短編名作集の中で訳されているらしい。

ハイチ革命というハイチの黒人奴隷の反乱につながる世界を描いているのだと思うが、サトウキビ工場から逃亡した黒人奴隷と、逃亡者を追跡する立場にある番犬で、群れから離れてしまった名前を持たない『犬』の二人(?)の逃亡者を対比しながらメタファーを使って皮肉に力強くえぐるように心理をついて描いている作品だ。

この日は、大嵐が来る日で、時間がたっぷりなかったので、後で先生にメールで言い足りなかったことを送った。それを載せておく。


A causa del tiempo mal, no teníamos horas suficiente.
Tenía más cosas deseaba decir como: "Es la historia de independencia de Perro."
"Hay muchas guerras para su independencia como :

Perros contra humano,
Perro contra jibaros,
blancos contra negro,
Perro contra Cimarron,
fugitivo contra policia,
autoridad contra obediencia,
libertad contra hambre,
libertad contra soledad,
los fuertes contra los débiles,
grupo contra solo (individual),
dependencia (pertenecer?) contra independencia,,,etc

En esta situación para hacerse independencia debe de luchar contra algo como la lista arriba.
Es Perro.
O si no es fuerte, solamente debe de morir como Cimarron.

つまり、この作品はある意味では、『犬』の自立の物語であり、犬は犬なのだが、黒人に対して何か別の生き方をした人間の化身を犬として描き、比喩を使って、孤独に負けて怠惰に屈し死に行く黒人奴隷に対し、あらゆる戦い(監督:奴隷、一匹狼:群れ、白人:黒人、犬:奴隷、権力:服従、自由:空腹、自由:孤独・恐怖、強者:弱者、依存:独立・・・)に打ち勝った『犬』が本当の自由を勝ち得て生き延びた。

 犬はそれほど服従を嫌い、鞭を嫌い、、、初めは一人になって恐くて寂しくて遠くの野犬の鳴き声にすらびくびくしていたが、夜の闇から始まって、色々な命がけの戦いを勝ち抜く毎に、野生化しながら強くなり仕舞いには一時は友だちだった再び逃亡して来た黒人奴隷すらも引きちぎって食べてしまう。こうして勝ち得た生き延びるための自由。

(ここで勝ち得た自由はハイチの革命で勝ち得た自由と比較したらどうなのだろうか?)

しかし、そこで得た本当の自由は、永遠の戦いの繰り返しがないと得られない物であり、ある時は以前友人だったものでも敵になり殺さないと得られない物であるという、どうしようもない不条理さが隠されている。
それでも、奴隷で屈するよりそのいばらの道を選ぶ・・・という疑問の投げかけは、私たちへの問いかけとなる。

ラテンアメリカの文学はすごい。
ちなみに、第一回目はガルシア・マルケスの"En este pueblo no hay ladrones" (この町に泥棒はいない)でした。

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