2012年7月9日月曜日

"Historia de una gaviota y del gato que le enseñó a volar" 〜カモメに飛ぶ手ほどきをした猫の物語


この作品は、『カモメに飛ぶ手ほどきをした猫の物語』というタイトルがついている。
スペイン語の本だ。作者はルイス・セプルベダ (Luis Sepúlveda) というチリの作家で長い間色々な国を回り、現在ドイツ在住だ。。
平田渡さんがスペイン語の学習教材として原書のまま注釈をつけて編集して下さった。

サブタイトルに、"8歳から88歳までの若い人びと向きの小説"と書いてある。
今年の四月に同学社から刊行されたばかりだ。

『カモメに飛ぶことを教えた猫』というタイトルで日本語の翻訳本も随分前に出ているらしい。
ヨーロッパでは大ベストセラーだったそうだ。(何年頃だろうか?)

私にとっての初体験は、初級用ということもあり、とにかく速読できたことだ。辞書を使わなくてもどんどん読み進めることができた。今までは辞書を引いても分からないような作品ばかり読んでいたので、原書をこのように読めることはとても嬉しかった。

英語や日本語の本を読んでいるように、分からない箇所は飛ばして読んでも意味はきちんと付いて来てくれた。

挿絵が素晴らしく、もちろん文章もとても素敵だ。

カモメのケンガーはほんの一瞬のことで群れからはぐれてしまい、やっとの思いでヘドロの海から飛び立ったが、ハンブルグのソルバスというデブ猫のいるバルコニーに墜落し息絶えてしまう。この時の群れからはぐれる様子などは可愛らしくて笑ってしまうが、その後のことを考えると笑ってはいられない。

ソルバスはバケーションに行っている飼い主の一家の留守中で一人のんびり留守番だ。瀕死のカモメが空から落ちて来たのだから大変だ。そしてこのケンガーにあることを約束させられる。

ケンガーはソルバスの前で卵を産んで死んでしまうのだが、ソルバスはその卵を孵して育てて旅立たせてあげなければならなくなったのだ。 ソルバス自身も大変な生い立ちがあって今の飼い主のお陰で立派に育てられているので、一生懸命にカモメの赤ちゃんの世話をする。本当に必死で。

それでも、自分一人ではできないことだらけで、まわりの色々な仲間たちに助けてもらう。もちろん人間にも。
猫は、本当は人間の言葉をしゃべることができるのだそうだ。内緒だが・・・

カモメの子アフォルトゥナーダは最後には見事に飛び立って行くのだが、その間の悪戦苦闘が実に楽しい。多分劇場で芝居がかってやったら面白い作品になるだろう。

約束を必死で守るソルバスの温かい姿はとても貴重だ。いつの世でも、どこの国でもみんなの心の中にもそんな気持ちがあって欲しいものだ・・・
良い作品はいつになっても8歳から88歳までの若い人々を心から楽しませてくれ、病んだ心を癒やしてくれる。(何故88歳までなのか・・・?)

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