2012年12月17日月曜日

『ゴーイング・マイ・ホーム』〜自然な会話がホッとする

『ゴーイング・マイ・ホーム』これはとても珍しい作品だ。
ここに流れている時間は静かでゆっくりで、ほんのり温かい。

高校生の頃『学生村』と言って、夏休み中に一ヶ月ほどの間、信州の田舎の民家が食事付きで受験生を受け入れてくれるシステムがあった。暑い夏の間、冷房も必要のない世界で勉強に精を出せるということが狙いだった。
もちろん、回りは田畑ばかりだし、夜になるとお蚕さんがバリバリ桑の葉っぱを食べる音ばかり聞こえて来るような、遊ぶ所など皆無の世界。

けれど、滞在中の村の小道を歩いている時にこれと良く似た静かな空気が流れていたのを思い出す。

長野県の鬼無里村、水芭蕉で有名な所だ。
食事は3食とも村の中心にある今にも倒壊しそうな木造の旅館に食べに行く。村に滞在中の受験生は各家庭から時間になるとその旅館の食堂にやってくる。村があまり静かなので、「ああ、こんなに居たんだ!」とその時思う。

私は高校のクラスの同級生とルームシェアして申し込んだ。
彼女とはそんなに仲良しだったわけでもないのに、不思議なことに、
「ソラちゃん、学生村行かない?」という声かけに
「うん、行く」何の抵抗もなく答えたのがきっかけだった。

一ヶ月間同室で、色々おしゃべりをして暮らした。さっぱりとしたとても良い友だち関係が築けた。
ところが彼女は念願の大学生になったその年に、ひどい貧血がもとで亡くなってしまった。私と同じ病気だった。学生村滞在から数ヶ月後のことだった。

この番組は、今までに全くないタイプの作品だ。映画ではあるかもしれないが、テレビドラマではとても珍しい。以前大好きで印象に残っている『すいか』とか、をちょっぴり思い出す空気が流れているかもしれないが・・。
最初はゴンチチの音楽が気持ち良くて、しかも時間があまりにもゆっくり流れるので眠くなって困ったが、しっかりはまって私を気持ちのよい世界に引き込んでくれている。

一番感じが良いのが、出演者の静かなつぶやきみたいな会話。
このしゃべり口調が、あまりにも自然で、その辺の村に入り込んでいつの間にか仲間になって、テーブルを囲んで手仕事をしながらだらだらしゃっべっているような感じがして、生活感があって、とてもいい。

宮崎あおいのちょっぴりひねくれたぶっきらぼうさ、山口智子の無理のない大きな温かさ、阿部ちゃんのあの調子。そしてもえちゃんの存在が大切なkeyになっている。
クーナの存在がいとも自然に受け入れられるから・・・

出演者の一人一人が当り役で、丁寧な作品だ。
西田敏行さんのおさえた役柄、お父さんの夏八木勲さんは本当にご病気ではないのだろうか?どうしても『風のガーデン』の緒形拳さんと重なってしまう。
もともと阿部サダヲ君は大好きだから、ほっぺを赤くして赤い三角のクーナ帽をかぶった姿はピッタリだ。

マッキーの主題歌とともに、もう少しの間この世界に心行くまで浸っていようと思う。見えない世界の中で、40年前のあの空気を感じながら。


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