2011年12月10日土曜日

『バナナフィッシュ』

何年ぶりだろう? バナナフィッシュを読み直した。
随分忘れてしまっている。 丁寧に読んだ。

マックスとアッシュとのつながりやショーター、シン、タオそしてユーシスとの複雑な関係が記憶の中でリセットされた。
そしてゴルツィネとユーシスの心の中で起きる嫉妬が物語を運んでいき、ショーターの愛が、周りを包み、エイジやブランカを通してシンに受け継がれ、やがては大きな罪の根源であるユーシスへの救いにつながっていく。


これは人間の孤独から来る『愛を求める』物語、つまりは心の中で起きる様々な葛藤、特に色々な形で生じる嫉妬との戦いの物語だ。
この嫉妬との戦いは、人間に心がある限り、人々が苦しむ限り、繰り返し永遠に続く戦いでもあると思う。
それに欲望や野心が加わり更に複雑な戦いが生じてくる。
現実のこの世界でも、私の周りで進行中だ。

最後のアッシュの死は、余韻が『あしたのジョー』を読み終えたときのなんとも言えない雰囲気と重なり、永遠の眠りについたのに、強烈な印象を人々の心に焼き付け、それを受けたものの心の中で永遠に生き続けるという結末に行き着く。後味は悪くなく、むしろとても静かで寂しく、悲しく・・・それでも何か温かい優しさでアッシュが包まれる幸福感みたいなものがあるので救われる。

私の愛読書の一つだ。
『出直しておいで』とともに年齢がいくつになっても読み続けて、心が洗われる作品だ。

それにしても、アッシュの最初の顔と終りの顔では全く違うではないか。吉田さんも平気で顔を変えて行くのだから困ったもんだ、とは言いながら本当に素敵になって行くので、うっとりで何とも言えない。
確かにリヴァー・フェニックスにそっくりだけれど、やはり完全に別人格の完成されたアッシュの顔だ。

人生の途中で一呼吸

そして、いつになってもショーターが心の奥深く残ってたまらない。
ショーターの心が鍵を握り、残されたシンやエイジにつながっていく。

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