2014年1月13日月曜日

女のいない男たち3 〜『木野』 by 村上春樹

文藝春秋に『女のいない男たち』シリーズ3が出ていた。
どのようなタイミングで連載するのか分からないが、1〜3まで出たということはまだ続くのだろうか?
今までの村上春樹さんにないことなので、
何がテーマなのか、どんな試みなのか興味深いところだ。



前2作とは異なり、今回はビートルズの曲は出て来なかった。
代わりにジャズ。
よって、全てビートルズで通すわけではなさそうだ。
けれど、妙に個性的な登場人物たちが出てくるのは、3作共通点だ。

この作品は、心に隙間ができてしまった人間に何者かが(蛇だったり)侵入してきて心を乗っ取られてしまう危険を暗示している。
人は苦しい時にはとことん苦しまなければいけない。逃げてしまったり、忘れた振りをしたり、たとえ苦しんだとしても中途半端に苦しむのでは意味がないということだ。

妻に裏切られた木野は、とことん苦しまずに心を切り替えてしまった。会社をやめ、妻と離婚し、その場から居なくなった。
そして、心が空っぽになって、小さなバーを始めた。

だから心を預けておきたい人にとって木野という存在は、とても居心地が良く恰好の逃げ場所なのだ、何しろ空っぽなのだから入りやすい。ちょっと不気味でホラー映画みたいだが、彼を狙っているわけの分からないものたちがたくさんいても可笑しくない。
そして、そのまま行くと木野の中の自分が何者かに占拠されて消えて行く。

木野の伯母さんの話しでは、
「蛇は、古代の神話の中では人を導く役割を果たしているが、それが良い方向なのか悪い方向なのかは結果を見ないと分からない。もともと両義的な生き物なのだ。中でも一番大きくて賢い蛇は、自分が殺されることがないように、心臓を別のところに隠しておく。だからその蛇を殺そうと思ったら留守の時に隠れ家に行ってその心臓を切り裂かねばならない」ということだそうだ。

『星の王子さま』にも出て来たが、蛇は嫌いだが面白い。
両義性か・・・


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