2014年11月19日水曜日

黄斑円孔手術 その② 〜これからが本番、うつ伏せ地獄!

今回の黄斑円孔に関して以下のことを書いてきました

1.加齢性黄斑変性だと思ったら硝子体黄斑牽引症候群だった 
2.黄斑円孔〜不思議な世界 
3.黄斑円孔手術その① 入院、手術、そしてうつ伏せ開始
4.黄斑円孔手術その② これからが本番、うつ伏せ地獄!
5.黄斑円孔手術その③ 退院後、視界と生活
6. 黄斑円孔手術その④ 術後1ヶ月半視力
7.黄斑円孔手術その⑤ 〜退院後2ヶ月検診、反対側の目も手術が必要!!
8. 黄斑円孔手術その⑥ 〜奇跡だ〜、硝子体が網膜から離れた!!
9. 黄斑円孔手術その⑦ 〜一年後の様子
10. 黄斑円孔手術その⑧ 〜手術後2年目の様子
11. 黄斑円孔手術その⑨ 〜術後2年半
12.黄斑円孔手術その後、 網膜剥離手術① 〜裂孔原生網膜剥離になってしまった!
13. 黄斑円孔手術その後、 網膜剥離手術② 〜原因
14. 黄斑円孔手術その後、網膜剥離手術③ 〜術後1ヶ月以内の様子
15.網膜剥離再手術① 〜手術後1か月で再発!! 悪夢の日々

16.黄斑円孔その後、反対側の目の網膜剥離再手術② 〜再手術後1ヶ月、シリコンスポンジとシリコンオイル
************

今回はシリーズ4回目です。
さて、ひとつ前のブログで書いたように、うつ伏せ地獄が始まりました。

手術が決まって初めての診察の時、執刀医の先生に「どれくらいうつ伏せをしないといけないのですか?」と聞くと、「4〜5日は・・・たいへんですねえ〜」などと気軽に答えが返ってきたので、『へえ〜、4、5日でいいのか〜?』などとあなどっていたのだが、実際はガスが抜けるまでの2週間続きました。



「先生、まだうつ伏せしないといけないんですか?」
「ガスが消えるまで駄目だよ〜」涼しい顔をして冷静に言う先生。うらめしぃぃぃ〜

私の友だちのお姉さまが10年前に手術した時は、全く固定されたうつ伏せ5日間で、入院が3週間だったと言っていたし、この病院へ渡される前の病院でも、先生から「入院は2週間から1ヶ月になりますよ」と言われていた。

だからこちらで、およそ1週間の入院と言われた時、きつねにつままれたような気がしたし、思ったより早く家に帰れると思って喜んでいたのだった。
ところがどっこい!早い退院は病院のベッドが混んでいるためであり、入院中に対処の仕方をしっかり学び、それと同じことを家でしなければいけないのだとの認識に至った時、これは大変だ!と初めてことの重要性を自覚したものだった。

家に戻ったら食事は出ない! もう一人分の食事の準備は?掃除は?お風呂は?シャンプーは? 下を向いて寝ているだけの人に何ができよう!

10月29日
さて、手術の翌日:朝から回診、手術後のチェックが病棟の担当医からあり、外来の検査室で早速検査があった。
そして、一日4回、一回5分おきに4本の点眼と、3回の抗生物質、と結構患者なりに忙しい日々が始まりました。検査や移動の時は顔を上げていても良さそうなので、24時間完璧にうつ伏せでなくてもよさそうだとういことを密かに学び、自分なりのゆるみを見つけ、少し気が楽になる。

夕方4時過ぎに執刀医の回診で、ガスに押されて、網膜の穴がくっつき始めている旨の報告があり、でも真ん中の黄斑部分だけまだ隙間が開いたままだが少しずつ修復されていくから〜と説明があった。
うつ伏せを頑張る意外に道無し!とのこと。

左目の老眼が著しく進行していて、片目で近くの物を見るのはかなり大変だ。

このようにして一日に2回、病棟の先生と執刀医の回診があり、検査をして眼帯のガーゼを替えて〜の繰り返しが続く。

朝6時に起きて点眼なのだが、この時は目の中がゴロゴロ、チクチクして充血、目やに・・の状態。ゴロゴロは、網膜をえぐって硝子体から剥がしたための傷、チクチクは手術で3カ所縫ってあるので、その糸が溶けるまでは仕方がないとのこと。

鏡の前で眼帯を外して手を洗うごとに、鏡に映った自分の顔を見るわけだが、正面を向いた視界に結構太い黒い横線があり下が水、上が空気の境界線を映し出す。その線が日に日に下へ下へと移動して行くことになる。

そのまま下向きになると、その黒い境界線が移動して行って何と丸い巨大レンズと言おうかお皿といおうか、そんな物体に変わる。それがうつ伏せ状態の黄斑を覆うガスになるわけで、目を閉じても見えるし、開いていても見えるし・・・それが消えるまで2週間、下を向いてはその円形の物体と付き合い続けることになる。

後になってみると、その物体は日に日に小さくなり、2週間後にはまん丸のビー玉くらいになって消えてしまった。消える瞬間は絶対に見逃すまいと思っていたが、確かに最後の瞬間を見た。ちょっと感動もの。だって2週間目を開けても閉じても見え続ける私を苦しめた物体が消えたのだから。

手術後4日目の夕方、いきなり目の中に変なものが見え始めた。黒いレンズのような線が下に移動してきたのだった。
それまではまさに水中で物を見ている感じ、プールの中でブクブク泡を吐きながら目を開けて人々の足をみているような世界だったのが、線より上の空気の世界になったのだ。もちろんこちらの世界もうすぼんやりだ。あちらは水の中だったら、こちらは靄の中といったところか。違いはこちらは霞んでいるだけで、水面のように揺れない。
目の中は常に奇妙な物体が動いているのだから、もう別世界なのだが、この瞬間は「エッ??何が起きたの?」と突然天地がひっくり返ったような、不思議な体験だった。

水の世界から空気の世界への移動。

その日からは、黒い線が下へ下がって行くのが楽しみだった。病棟の主治医の先生に、
「この線が視界から消えたら、うつ伏せは終わりですか・」と聞いたら、
「前を向いてそれが消えても、下を向くとまだガスが残っているから、まだまだよ」
と言われ、ガッカリしたものだ。

5日目頃から、腰痛や筋肉痛でほとんどどんな体位も辛くて、眠れなくなった。シップを出してもらって、夜中に貼ってもらったり・・・しかし、うつ伏せの体勢は変わらないのだから痛みは続くばかり。仕方ないのでテーブルの上にUの字枕を置いて、顔だけ伏せて寝たり、猫のポーズをしたり、足と頭を替えたり・・・とにかく色々したが、耐える意外に方法がない。気が滅入ってくる。

しかも目を開いていても、閉じても見えるこの物体・・・そのうちに何だか親しみを感じて話しかけるまでになる。

テレビは顔が上がるから、音を聞くだけ。でもついていると見たくなるので、結局消す。iphoneにラジオのアプリを入れて聞いたり、ipodで英語やスペイン語を聞いたりが一番気がまぎれて、時間が過ぎる。
携帯の画面はチラつくし、老眼なので真下そ向いて操作するのが結構大変で、目が疲れてなかなか難しい。

要するに、私の場合は何もしないのが一番だった。
デジタルは目が疲れるので、1冊ニコリの数独100選の本を買っておいたのが、結構役に立った。画面は動かないし、光らないから目が楽だし、鉛筆一本で下を向いてできるので、うつ伏せに疲れた時にほんの時々だが、気が紛れた。

6日目から、ガスの液化の線が、視界の下の方で虹のような弧を描くようになった。
そして、8日目に下を向いたまま退院。

家に戻ってからも一週間うつ伏せが続き、上記の弧が次第に緩い虹からもっこりしてきて次第に小さくなる。
でも、まだ顔の角度を変えて下を向くとふちの黒い巨大コンタクトレンズのような円になる。そのレンズを通してその下にある手のひらを見ると面白い世界が底にある。こればかりは説明のしようがない。

下を向くことしかできないので、うつ伏せのまま体位を変えて退屈しのぎに前を見たり下を見たり、それを繰り返し、中の物体の変化をひたすら観察する。記念にスケッチまでする。

最後は弧が完璧な円に変わり、シャボン玉のようになってふわふわ舞って、終末期には小さな泡のようになった。ちょうど小さな黒色てんとう虫くらいになってピョンピョン飛んだかと思ったら軽くなって静かに消えて行った。

丁度2週間がたった日、ガスが消えた。
そしてついに、うつ伏せ終了!!
翌日、退院後1週間の検診で、K病院へ行く。


0 件のコメント:

コメントを投稿